信仰色の強い芸態を残す鹿踊(ししおどり)
のぐちのししおどり
野口鹿踊
Noguchi no Shishiodori
▼ In English
解説
Description
野口の鹿踊は,約300年の伝統を持つ踊りで,この地に残る宝永8年(1711)の伝書には,天和元年(1681)に相模国の桃生野(ものうの)仲次の弟子・桃生野八郎兵衛から,野口の沢口与蔵に伝授されたとあり,同系のものは隣接する現川崎町本砂金にも伝承されている。悪魔払いや五穀豊穣をも祈るが,本来は先祖供養を目的とする盆の芸能で,かつては五行幣(ごぎょうへい)を配りながら集落の各戸を踊り歩いた。この鹿踊りは,1人立ち6頭立てて,「建物(たてもの)」という飾りをつけた異形の鹿頭をかぶって,五行幣の神籬(ひもろぎ)を背負い,腹に付けた羯鼓(かっこ)を打ち鳴らし,幌幕をひるがえしながら踊り,舞曲の筋立には人間の情感が組み込まれている。道化役の「ささらすり」は道化面を付けて,鹿のまわりを踊りまわり,「鐘鼓(しょうご)」と呼ぶ鐘打ちの子供は,念仏の鐘を打つ。踊庭には二間四方の四隅とその中央に五色の五行旗を立てて注連縄(しめなわ)を張り,装束には陰陽五行の飾りや五行幣も飾られて極めて信仰色の強い芸態を残している。 (演じられる時期と場所 不定期)