仙台城ゆかりの茶室「残月亭」の名称を受けつぐ,明治中期の書院風茶室
きゅうあねはけちゃしつ(ざんげつてい)
旧姉歯家茶室(残月亭)
Kyu Anehake Chashitsu(Zangetsutei)
▼ In English
解説
Description
旧姉歯家茶室は,四畳半の畳敷の茶室を中心に,水屋,台所,縁が付き,屋根は寄棟造(よせむねづくり)鉄板葺となっている。扁額(へんがく)「残月亭」1面が附(つけたり)指定されている。仙台市博物館の敷地内に解体移築する際の調査により,補修された痕が見られるがほぼ創建当時の遺構をよく残しており,保存状態はよく,部材の一部は,痕跡や様式の点から江戸時代までさかのぼる古材木を使用していることがわかった。現在の茶室は,明治中期に初代の仙台区長となった松倉恂によって仙台市土樋の屋敷内に建てられ,その後姉歯家所有となって昭和初期と戦後の二度移築されたものが,仙台市に寄付されて平成11年に仙台市博物館敷地内に,令和5年に青葉山公園仙臺緑彩館敷地内に移築されたものである。松倉恂の日誌によれば,この茶室を「残月亭」と命名するにあたり,伊達家当主に名称の使用と扁額の製作を願い出て,許可を受けている。この扁額は,その裏銘によれば,正徳4年(1714)に第五代藩主伊達吉村が伊達政宗の筆跡になる残月亭の扁額を模刻したものを,明治27年(1894)に更に模刻したものである。草庵風茶室としてより,書院風茶室としての性格が強く,仙台城ゆかりの茶室「残月亭」の名称を受け継いだ,保存状態良好な明治中期の書院風茶室の遺構として貴重である。