明治前期の漁労・水産物の記録
みやぎけんぎょぐずかいおよびりゃくかい
宮城県漁具図解及び略解
Miyagiken Gyogu Zukai oyobi Ryakkai
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解説
Description
明治16年(1883)11月に東京で開催された水産博覧会出展を機会に，宮城県勧業課によって作成された。記載内容は，この時期に宮城県下の水産業が行っている漁具・漁法と，その漁獲対象である魚介類を精査して，克明に描写した絵図及び実情調査に基づく解説文で構成されるが，水産・漁業史ばかりではなく民俗誌・博物史・自然史という他分野にも関連するもので，多面的な要素を含んでいる。
本県の海浜と河川における漁具・漁法を，行政の側が実施した本格的学術調査の，早期の記録とみなすことができる本書は，前代である江戸期からの伝統技法を継承する状況と，その後現代まで維持・踏襲される形態を究明する際に，双方に関連する画期的な動向を提示しており，一部には独自の事例も見出される。また，魚介類に関しては，豊富な種類が示され，明治時代前期における本県水産物の実態を具体的に伝えるものになっている。
このように，本書は水産行政の初期の成果を示す数少ない資料のひとつにもなり，この貴重さは，本書をもとに明治21年に宮城県農商課編撰「宮城県漁具図解附水産物略図」が出版されたことからも裏付けられる。(宮城県図書館所蔵)