地震と津波による,弥生時代中期の災害痕跡を発見。
あらいひろせいせき
荒井広瀬遺跡
Arai-hirose iseki
解説
荒井広瀬遺跡は,市の東部にあり,JR仙台駅の南東約6㎞に位置する。名取川とその支流である広瀬川の左岸に形成された自然堤防や後背湿地上に立地する。標高は3~4mほどで,面積は約5,300㎡,その範囲は南北約150m,東西約80mである。現在は区画整理事業が進み,宅地となっている。本遺跡は,津波によって廃絶した弥生時代中期の水田跡である沓形遺跡及び荒井南遺跡に隣接している。平成25年(2013)に区画整理事業に伴う発掘調査が行われ,河川跡,溝跡,土坑を発見している。主に河川跡から弥生時代中期,古墳時代中期,平安時代の土器,木製品が出土した。また,河川跡と平行する溝跡の底面から地震痕跡である地割れ跡を発見した。地割れ跡は溝跡の底面を蛇行し,長さ6.2m以上,幅約5~20㎝で,深さ約0.6~0.8mである。地割れ跡には当時の表土が堆積し,それを沓形遺跡,荒井南遺跡で広範囲に認められた弥生時代中期の津波堆積物と一連と考えられる砂が覆っている。さらに古墳時代中期の河川堆積層に覆われている。また,地割れ跡内部に落ち込んだ堆積土,およびその起源となった溝跡下層の堆積土と,その上層の津波堆積物砂層から,出土遺物は弥生時代中期に属するものに限定されている。これらのことから地割れの時期は弥生時代中期と考えられ,前述の遺跡で認められた津波堆積物をもたらした津波の発生が,日本海溝付近を震源とする大規模な地震に起因する可能性を発掘調査で明らかにした貴重な例である。