大野田古墳群の盟主墳。東北地方で初めての革盾が出土。
かすがしゃこふん
春日社古墳
Kasugasha kofun
解説
春日社古墳は,市の南部にあり,地下鉄富沢駅の東方200mに位置する。標高12mの自然堤防上に立地し,面積は約1,000㎡である。仙台市教育委員会によって,昭和52年(1977)と平成19年(2007)~20年に調査が行われた。その結果,この古墳は,2つの埋葬主体部(第1主体部と第2主体部)を持つ墳径約32mの円墳であることが明らかになり,古墳時代中期後半から後期前葉の大野田古墳群のなかで最も大きい古墳のひとつで,副葬品などから,その盟主墳と考えられた。第1主体部は,大きさなどは明確でないが,石棺が存在する可能性が推定された。第2主体部は,2段の掘り込みを持ち,1段目から革盾1点(高さ1.2m,下端幅0.72m,上端幅0.60m),鉄矛1点,矢羽根の痕跡を伴う鉄鏃(てつぞく)30点の副葬品が出土した。このうち,革盾は東北では初めての出土で,被葬者と朝廷との関係を示す重要な遺物である。2段目の大きさは長さ2.22m,幅0.72mの長方形で,棺を埋納したと推定されるが,棺材などは発見されていない。墳丘の外側には,幅6.85~9.40mの周溝がめぐる。周溝からは円筒埴輪,朝顔形埴輪のほかに,仙台市内では数少ない形象埴輪(馬形埴輪,衣蓋(きぬがさ)形埴輪など)が出土している。これらの埴輪は,春日社古墳の北西約2kmに位置する富沢窯跡で生産されたことが推定されており,古墳の造営に関わる生産地と消費地の関係を考えるうえで貴重な成果となっている。なお,埋葬主体部から出土した革盾1点,鉄矛1点,鉄鏃30点は仙台市指定有形文化財(考古資料)に指定されている。