玦状(けつじょう)耳飾など,発見例の少ない縄文時代前期後半の遺物が多数出土。
きたはらかいどうびーいせき
北原街道B遺跡
Kitahara-kaido-bi iseki
解説
北原街道B遺跡は,市の西部にあり,JR愛子駅の西約1km,国道48号線の北側に位置する。七北田丘陵と青葉山丘陵に挟まれた愛子盆地を流れる広瀬川右岸の河岸段丘端部に立地し,標高は122mである。遺跡の範囲は段丘に沿っており,面積は約20,200㎡である。宅地造成に伴い,平成4年(1992)に仙台市教育委員会により調査が行われた。調査区の一部で遺物包含層が発見され,縄文時代前期の遺物が多量に出土した。縄文土器は前期後半のものが中心で,器形は深鉢が多い。深鉢は口縁部に2個の突起をもつものや,刺突文のついた鋸歯状の装飾をつけたものがあり,また胴部には細い粘土紐により梯子(はしご)状の文様や連続した山形文が施されている。土偶は3点出土しており,全て板状のもので,表と裏に竹管による刺突文(しとつもん)や沈線文(ちんせんもん)がみられ,沈線文により区画した内側に刺突文を充填(じゅうてん)している。石器では石鏃(せきぞく),石錐(いしきり),石匙(いしさじ),尖頭器,石箆(いしべら)などをはじめとした剝片石器や,磨石などの礫(れき)石器も多く出土した。出土した石器のうち,石鏃が半数以上を占めているのはこの遺跡の特色である。石製品では玦状耳飾(けつじょうみみかざり)が3点出土しているが,市内でも出土数が少なく,貴重である。その他の出土遺物には円盤状土製品や磨製石斧などがある。出土した土器以外の遺物も縄文時代前期後半と考えられる。この地区での広瀬川右岸においては,遺跡の分布が少ない傾向があり,市内でも発見例の少ない縄文時代前期後半の遺物が多数出土したことは注目される。