縄文時代の集落跡。市内で唯一の,貝殻腹縁文を施した縄文早期の土器を発見。
なしのえーいせき
梨野A遺跡
Nashino-e iseki
解説
梨野A遺跡は,市の南部にあり,東北自動車道仙台南インターチェンジの北西約3kmの茂庭台団地内に位置する。蕃山丘陵南東側の丘陵緩斜面及び平坦面上に立地し,標高は180~190m,面積は約20,000㎡である。茂庭台団地造成工事に伴って昭和54年(1979)~56年に発掘調査が実施されている。調査の結果,縄文時代各時期の遺構・遺物が発見された。検出遺構は,縄文時代早期の土坑2基,ピット3基,中期の複式炉を備える竪穴住居跡2軒,中期から後期の土壙(どこう)28基,埋設土器2基,炉跡1基,ピット64基,晩期の土壙墓4基である。晩期の土壙墓には,底面に小型の壺と浅鉢が副葬されているものがある。また,ピットには,接合資料を含む88点もの石器が出土したものがある。さらには,貝殻腹縁文を施した早期中頃の土器のように,仙台市内では,他に出土例がない貴重な資料もある。このように,本遺跡は縄文時代の全般にわたる遺跡で,茂庭地区内において遺構構成及びその立地に時期的変遷を知ることの出来る数少ない遺跡のひとつである。また,縄文時代の蕃山丘陵内では,沼原A~C遺跡,嶺山A~C遺跡などが狩猟域であったことに対し,本遺跡は中期以降,小規模ながら集落が形成されており,丘陵内における居住域として,重要な役割を果たしたと考えられる。縄文時代以外では,古墳時代中期の土壙墓が1基検出されているほか,奈良・平安時代の土師器,赤焼土器,中世陶器片が1点出土している。なお,昭和56年の調査は,遺跡主要部地区(縄文時代中期の住居跡検出地区)の保存のための発掘調査である。現在この地区は埋め戻され,団地北東側入り口東側の公園となっている。