江戸時代の仙台領の名所旧跡・故事・伝承を記した地誌
おうしゅうめいしょずえ(じひつこうほん)
奥州名所図会(自筆稿本)
Oshu Meisho Zue ( Jihitsu Kohon )
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解説
Description
仙台大崎八幡宮の神宮で和歌,俳諧などの文芸にも一家をなしていた大場雄淵<宝暦8年(1758)~文政12年(1829) >によって詳細な文章記述と細密な絵図描写が行われた本書は,江戸時代仙台領の名所旧跡・風物歴史・故事・伝承和歌・俳諧・狂歌などの諸相を知る上で極めて優れた著作である。「奥州名所」と題してはいるが,内容は仙台領内に限られている。
仙台領を題材にした地誌・名所図会には,他にいくつかあるが,本書はそれらに比べ文章と図が豊富にある。各項目について当時の風俗・風景画,考証された歴史画など,的確な絵図を数多く採用した上に,博識をもって丁寧な説明を加え,膨大な量の情報を網羅した本書は,当地の特性を伝える代表的な著作となるものである。特に,塩釜神社を中心にする信仰と湊町の風物,瑞巌寺を中心にする信仰と多彩な島々の景観は,文,絵ともに多岐にわたる描写が行われていて,特筆される。本資料での挿絵の筆者は,雄淵本人か否かは不明だが,一人の筆と思われる。
また,稿本という性格にあるため,附筆書入れによる絵図や解説文の補足,注釈,絵師への指図など,上梓にむけての指示や,朱字文は白色上塗りの訂正が各所に見られ,当時の編集作業や出版事情の一端を具体的に教えてもいる。(宮城県図書館所蔵)