仙台祭の山車や練物の墨刷り版画
せんだいまつりえかんけいしりょう
仙台祭絵関係資料
Sendaimatsurie Kankei Shiryo
解説
Description
本資料は「寛政三年仙台東照宮檀尻絵(刊本)」1帖と「仙台東照宮御祭礼図(刊本)」1巻からなる。
「寛政三年仙台東照宮檀尻絵(刊本)」
本資料は,附帯の墨書きが示すように,寛政3年(1791)催行の仙台東照宮祭礼渡物(山車練物)に関連する墨刷り版画である。この年は何度か消長をみる東照宮祭礼にあっては盛況期のひとつにあたっており,翌4年にも挙行されている。本書には渡物を製作参加した商人名も記され,渡物と版画が連動している実態も判明する。
毎年9月に行われる仙台東照宮の祭礼は,二代藩主伊達忠宗の時期に勧請されたもので,「仙台祭」 の愛称で親しまれ,領内はもとより他領からも多くの参詣人が押し寄せた。その際に記念品,みやげ物の目的で作成されたのが,江戸や関西で盛行をみている浮世絵に通じる「まつり絵」だった。
十三代藩主伊達慶邦著『やくたい草』をはじめ『奥州仙台年中行事大意』『仙府年中往来』などの江戸後期の記事でも知られる,当祭礼恒例の名物だったこのような版画は,渡物の姿を図示するもので,「仙台祭絵」「檀尻絵」と呼ばれているが,渡物そのものを再現した大絵図,行列を全体的に描いた小絵図の,2種類が出版されている。江戸期全体で刷られた作品は大量に及んだことが推定できるのだが,この「まつり絵」の遺品は,江戸末期,明治期の作例はかなり現存しているものの,中期・後期の作は少なく,制作年代を特定できるものは殆ど判明していない。
「仙台東照宮御祭礼図(刊本)」
祭礼一行の様子を図示しており,先陣に始まり,北目町と本材木町の渡物,新伝馬町の馬乗り飾り,柳町,南町と大町の渡物,天狗や従者の神輿前触れ,獅子と神輿炉本体,奴らの後陣の順で10枚に配列している。大絵図と同様に各々1枚摺の版画として制作しているが,全て揃って現存する例は殆ど知られず,極めて稀な遺品とされる。「町々の渡し物の数々,神輿の行装,大絵図,小絵図とて,板にほりて刷り出し,売り歩く」(伊達慶邦著・『やくたい草』)と伝える墨摺り版画の,小絵図に該当する「仙台祭絵」の代表例である。