お歯黒を付ける際に用いた盥の一式。意匠・技法ともに優れた江戸時代の大名婚礼調度。
あおいもんきくまきえみみだらい
葵紋菊蒔絵耳盥
Aoimon Kiku Makie Mimidarai
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解説
Description
耳盥とは,お歯黒をつける際に用いる盥で,両側に耳のような形の取っ手があるため,この名前があり,台輪(だいわ)と呼ばれる台にのせて使用する。
この耳盥は,仙台藩六代藩主伊達宗村夫人である利根(とね)姫の所用と伝えられ,耳盥の本体,蓋,台輸の3点からなる。全体は光沢のある黒漆仕上げで,漆を薄く盛り上げたところに金銀粉を蒔く薄肉高蒔絵の技法により,絵画的な文様が表現されている。耳盥の形状および絵画的な文様,金銀蒔絵を基調とした漆芸技法などから,江戸時代中期(18世紀前半)の作とみられる。意匠・技法ともに優れ,所用者がわかる江戸時代中期の大名婚礼調度として,また,漆芸様式の変選をたどる上でも貴重なものである。耳盥:径27.7cm 高16.4cm,蓋:径29.8cm 高5.0cm 台輪:径29.0cm 高21.1cm